すばらシー!
廃版海図シリーズ
「地図を描いちゃった!」
小さいころ、昼間の遊び疲れでぐっすり寝入り、つい…という経験は、だれにも一度はあるはず。はずかしい地図だ。
こちらは歴史的な地図。学校でも習った伊能忠敬(1745~1818)は、「55歳から71歳まで、17年間にわたり、3万5千キロを歩きつづけ、日本ではじめての正確な地図『大日本沿海輿地全図』を作製するという偉業をなしとげた」(山田風太郎「人間臨終図巻」徳間書房より)。
この地図は、日本の海岸線を正確にとらえるのが目的でつくられたもので、明治初期に国土の基本図作成に貢献した。
地図には、地形図、地質図、土地利用図、海図、天気図など、目的に応じてさまざまな地図がある。このうち海上保安庁使用済みの廃版海図をリユースし、メッセージカード、レターセット、封筒などに加工され、商品化された。
おなじ地図がシリアスな職場から、くらしを彩る場へ、がらりとその用途を衣替えしたわけだ。コミュニケーションに、自己表現に役立てたい。
「地図を地図として使わなければならない、なんてことはありません。第一、アメリカなどでは、官製2万5千分の1地形図の古い売れ残りを利用した封筒があるくらいです。要するに地図を、花柄とか水玉のように模様として使ってしまったわけです」(今尾恵介「地図の遊び方」ちくま書房より)。
おなじ企画は、海の向こうにもあったようだ。
文:蟻田善造
蟻田善造[コピーライター]
1929年~2016年
高島屋宣伝部を経て、日本デザインセンター設立に参加。トヨタ自動車、伊勢丹、東芝などのクリエイティブ・ディレクションとコピーライティングを担当。日本の広告界の草創期をつくる。
1977年、株式会社二人のデスク設立。主なクライアントに宅配便のフットワーク社、フランス菓子店のアンリシャルパンティエ、デリカテッセンのロックフィールド社など。
いずれも、商品開発からプロモーション、店頭ディスプレイまで。コピーライティングだけでなく、ジャンルを越えたトータルデザインのディレクターでもある。
廃版海図シリーズ
海で使われる地図「海図」は、わずかな地形の変化で作りかえられます。 そのため廃版となって廃棄される海図を、ステーショナリーとして再生させました。