和か?洋か?
横浜かすてら
日本人で、カステラは嫌いだという人は珍しい。日本茶はもとより、紅茶やコーヒーにもよくあうからだろうか。その材料は、おもに小麦粉、卵、砂糖(水あめ、ハチミツもふくむ)で、卵の白身をしっかり泡立ててふっくらと弾力をつける。
天正年間(1573~91)、ポルトガル人が長崎でその製法を伝えたのが始まりとされるが、その後、江戸前の味に改良した「釜カステラ」はこちらが本場との由。赤レンガ倉庫の名物アイテムとして、レンガと同色同寸のパッケージも横浜らしいユーモアだ。
カステラに似た洋菓子に、パウンドケーキがある。その材料は小麦粉、卵、砂糖にバターが加わり、それぞれ1ポンド(450g)ずつ配合する。だからパウンドケーキという。これをフランスではカトル・カールと呼ぶ。カトルは4、カールは1/4で、4/4という意味。いずれもケーキづくりの基本となっている。戦後いち早く洋菓子の商品化でヒットしたのは、バターケーキの名で売り出されたパウンドケーキ。つぎにマドレーヌ、フィナンシェが人気を呼んだが、材料の配合はパウンドケーキが基本のようだ。
ポルトガル、スペイン、オランダあたりから伝來したカステラは、いまや和菓子の同類。いっぽう英仏渡来のパウンドケーキはれっきとした洋菓子。バターのあるなしで、器のそろえ方や飲み物の選び方、はては出会う顔ぶれと会話の内容まで変わってくるものか!
文:蟻田善造
蟻田善造[コピーライター]
1929年~2016年
高島屋宣伝部を経て、日本デザインセンター設立に参加。トヨタ自動車、伊勢丹、東芝などのクリエイティブ・ディレクションとコピーライティングを担当。日本の広告界の草創期をつくる。
1977年、株式会社二人のデスク設立。主なクライアントに宅配便のフットワーク社、フランス菓子店のアンリシャルパンティエ、デリカテッセンのロックフィールド社など。
いずれも、商品開発からプロモーション、店頭ディスプレイまで。コピーライティングだけでなく、ジャンルを越えたトータルデザインのディレクターでもある。
横浜かすてら
外箱は赤レンガとほぼ同寸の6×10×19cm、原材料はすべて自然素材、砂糖をひかえたヘルシーな仕上げ。