「お荷物」じゃないよ。
ヨコハマ・ガムテープ
「鈴木さん、お荷物ですよ。」
「ハーイ!」と受けとる段ボール箱を、このガムテープで目張りしてあると思わずニッコリ。送った人と受けとった人、ふたりの距離が急接近!
赤い靴の女の子やブルーダルなどのキャラが登場して、絵巻物のようにおもしろストーリーをくりひろげる。これは、無機質な「荷物」を、あたたかい「気持」に切り替えてくれるコミュニケーション・ツールなのだ。このガムテープがざっくばらんなケ(日常性)のツールだとしたら、ちょっとおすましなリボンはハレ(非日常性)のシンボルか。
リボンは古く古代ギリシャ、ローマ時代から用いられた。ルイ王朝時代には、男女の別なく頭髪や衣服を飾るファッションとして盛んにもてはやされた。この国には明治以降に伝えられた。夏目漱石の『三四郎』でも、「三四郎の頭の中に、女の結んでいたリボンの色が映った。」とある。そしていつしか、のしがみの西洋版として、デパートなどのギフト包装にも使われるようになった。
リボンにしろ、イラスト入りテープにしろ、自分の気持ちを精一杯つたえようとするコミュニケーションにほかならない。
とくにこのテープは、メール以上に雄弁だ。箱の目張りという機能性だけにとらわれず、もっと自分だけのクリエーテイヴな使い道、遊び方を考えてみよう。
文:蟻田善造
蟻田善造[コピーライター]
1929年~2016年
高島屋宣伝部を経て、日本デザインセンター設立に参加。トヨタ自動車、伊勢丹、東芝などのクリエイティブ・ディレクションとコピーライティングを担当。日本の広告界の草創期をつくる。
1977年、株式会社二人のデスク設立。主なクライアントに宅配便のフットワーク社、フランス菓子店のアンリシャルパンティエ、デリカテッセンのロックフィールド社など。
いずれも、商品開発からプロモーション、店頭ディスプレイまで。コピーライティングだけでなく、ジャンルを越えたトータルデザインのディレクターでもある。
ヨコハマ・ガムテープ
童謡「赤い靴」の楽譜や、みなとみらいの風景などをエンドレスでプリント。