業平、新西蘭、南阿弗利加、なんて読む?
珍版「横浜文明開化語辞典」
「ロマン」という言葉を使いたい、でもカタカナだと直接的で雰囲気が出ない…というとき、漢字で「浪漫」と書けばとたんに、少しレトロな大正から昭和の景色が浮かんでくる。
うまく当てた漢字だなあ…と調べてみたら、夏目漱石がつくった言葉だった。そもそも漱石は当て字が好きで、今でも残る「沢山」の当て字を残している。というときの「沢山」も漱石作。「兎に角」や「可笑しい」なども作ったらしい。
当て字が生まれたのは、文明開化の時代にさかのぼる。長い鎖国の末、ようやく門戸を開いた日本に西洋文化がどっと流れ込んだ。突如として目の前にあらわれた外国のモノたちは、チョンマゲライフの日本人にとっては驚きの連続だったに違いない。泡を吹き出すビール(麦酒)、軸木をこすると火が燃えるマッチ(燐寸)、夜の闇を昼のように照らすランプ(洋灯)など…これら文明の利器を何と呼び、何と綴るか…。
一説には、新政府が日本人に新しいものを浸透させるために、学者に当て字を考えるように頼んだとも。文明開化の街
横浜にも、当時そんな先人たちの知恵と努力がつまった当て字があふれていたに違いない。
ちなみに、「秋桜」と書いて「コスモス」と読むようになったのは昭和の時代。1977年(昭和52)、山口百恵の大ヒット曲「秋桜」から始まったと言われている。今や図鑑にも取り入れられ、一般的な当て字に定着した。
どんどん変化する言葉の中で、さて次はどんな当て字が誕生するのか…!?
(答:右からジャパン、ニュージーランド、南アフリカ)
文:田中あづさ
珍版「横浜文明開化語辞典」
こすると火がつく燐寸、スイッチひとつで明るくなる洋灯、透明で不思議な素材の硝子…。
文明開化時、横浜から入ってきたオドロキの数々を昔の人は苦心して漢字にあてました。絵と解説で見るオモシロ当て字辞典です。